サムスン デジタルサイネージの原理
レーザー光のような周波数の高い電波を、ピンポイントで照射する方法もないではないが、しかしレーダーが搭載されているのは高速で飛行しつづける航空機や人工衛星である。
地上をピンポイントで照射してその反射波をキャッチしても、えられる情報は、シュレッダーで切り刻まれた紙切れの一本になってしまう。
現実的には、やはりあるていどの観測幅は必要である。
そこで、たとえば航空機に搭載した合成開口レーダーの場合、まず地上に向かって電波を照射する。
パルス状の電波で、信号のようなものである。
これを、飛行方向に対し横に向かって照射する。
それゆえに航空機搭載の合成開口レーダーは、サイド・ルッキング・レーダー(SLARSidelL00kingAirbOrneRadar)と呼ばれている。
面は、竹を斜めに切った断面のような長楕円になる。
航空機が飛行してゆくとき、この長楕円の照射面もおなじ方向へ移動してゆく。
そして反射波は、地上の状況によってさまざまに変化する。
海面ならばほとんど反射などないが、陸域なら確実に反射するし、隆起物があれば顕著になる。
しかし反射波の変化はそれだけではない。
移動してゆく長楕円の照射面の前縁部が目標物にさしかかるとき、照射面の中央が目標物にさしかかるとき、そして照射面の後縁部が目標物にさしかかるときに、それぞれ反射波には変化が生じる。
変化というのは、かんたんにいえば電波の強弱である。
またパルス波のタイミングのズレなどである。
言葉をかえれば、それらはすべて情報である。
そういうさまざまな変化を、フィルムに記録する。
アナログ的に、濃淡のちがいにおきかえて記録するのである。
そして再現するときには、そのフイルムにレーザーを照射してやる。
すると、肉眼ではたんなる濃淡のちがいでしかない映像が、立体的になって再現されるのである。
ようするに、ホログラムの原理そのものである。
ただし航空機ではSLAR、すなわち横方向に向けるサイド・ルッキング・レーダーだが、衛星の場合は照射方向が後方になる。
つまり衛星の飛行方向と反対に、後ろに向かって照射し、その反射波をキャッチしながら観測してゆくことになる。
合成開口レーダーを搭載する衛星の飛行高度は、光学衛星と同様で四〇〇キロメートルから六〇〇キロメートルとなる。
また分解能は、一メートルから三メートルをめざしている。
しかしいかに分解能がよくなろうと、相手は電波である。
可視光領域で観測する光学衛星ほど、鮮明な画像は期待できない。
せいぜい目標物の輪郭の確認である。
ただし電波による観測であるがゆえに、夜間であろうと荒天であろうと関係ないという大きなメリットもある。
そこで、二つの衛星による情報が必要になる。
細部の観測が可能だが可視光領域と赤外線という制約のある光学衛星と、細部の鮮明さはないが二十四時間の観測が可能なレーダー衛星によるデータをミックスすることで、はじめて画像情報が生み出されるのだ。
ようするに光学衛星とレーダー衛星は、スキー・ドライブのスタッドレス・タイヤとチェーンのような関係である。
スタッドレスは、多少の降雪や圧雪路でもほどほどのスピードを出すことはできるものの、凍結路にはやはり弱い。
いっぽうチェーンは、凍結には強いがとてもスピードを出せるものではない。
両方を用意することで、はじめて安全なスキー・ドライブが可能になる。
情報収集衛星もおなじことだ。
光学衛星とレーダー衛星は、たがいに補完しあうべきものであり、運用はワンセットでなければならないようだ。
これはべつに、日本の情報収集衛星にかぎった話ではない。
アメリカの〝偵察衛星″にしても、おなじ方法をとっている。
アメリカの場合、現在運用している光学衛星では、有名な二つの大型軍事偵察衛星がある。
一つは〝ケンナン″と呼ばれる「KH111」、もう一つは通称〝イコン″という「KHI12」だ。
ケンナンもイコンも、直径が三メートル以上もある大型の望遠鏡を搭載しているといわれる。
運用の軌道は、高度三〇〇キロメートルから五〇〇キロメートルとされる。
分解能は〇・五フィートといわれるから、駐車場のクルマが十五センチ以上の間をあけてならんでいれば、台数を数えられることになる。
いっぽう合成開口レーダー搭載のレーダー衛星としては、アメリカにはラクロスがある。
分解能は、一メートルという。
日本が計画している情報収集衛星も、こうしたイコンやラクロスのようなアメリカの偵察衛星と、基本的にはおなじである。
ただし分解能などは、少し劣るようだ。
メートル、そしてロケットは一メートルあれば可能とされている。
日本が計画している情報収集衛星の分解能は、そのギリギリのところといってよいだろう。
ただし、である。
分解能一メートルというのは、ロケットを探知できるという限界であって、そのロケットがどのよテなものなのかといったところまで識別できるという意味ではない。
こうした詳細な情報を獲得するためには、やはり分解能はケンナンやイコンのように、少なくとも〇・五フィート、すなわち十五センチていどは必要といわれる。
ところで、気象衛星や放送衛星のように、つねに地球の自転速度に同調して周回することが要求される衛星は、赤道上空の静止軌道を飛ぶ。
高度は三六〇〇〇キロである。
しかしこれでは、光学的にも地上の状況を観測するのは不可能だ。
そこで情報収集衛星は、ずっと低い高度を飛ぶことになる。
高度三〇〇キロから、五〇〇キロである。
このあたりの高度を飛ぶ衛星は、速度もかなりなものになる。
なぜならば、高度が低いと地球の引力が強いうえに、わずかに存在する大気の抵抗もあるため、一定の速度を維持しないと落下してしまうからだ。
たとえば高度三六〇〇〇キロの静止軌道なら、衛星の速度は秒速三・一キロていどで、地球を周回する周期は自転と同期しているから、地上からは静止しているように見える。
しかし高度五〇〇キロでは、秒速七・六キロとはやく、周期も一時間三十四分三十七秒と短い。
つまり一日に十数回も地球を周回する。
情報収集衛星は、軌道面も静止軌道とはまったくちがい、太陽同期回帰軌道である。
静止軌道の軌道面が地球の赤道面と一致しているのに対し、太陽同期軌道は、太陽に対してつねに一定の角度を保っている軌道面だ。
かんたんにいうと、太陽と地球の中心を結ぶ線に対し、つねに直交する軌道面である。
そういう位置関係を保ちながら飛行すると、衛星は地球の南北の極点上空付近を通過することになる。
そのためこの軌道を、極軌道ともいう。
また衛星の側から見れば、その軌道というリングのなかで地球が自転している状態になる。
それに太陽の光の方向と軌道面の関係は、いつもおなじだ。
そのため地表への太陽光の入射角も一定しているから、観測に適している。
そして衛星が一定の回数を周回したのち、もとの目標物の上空にもどってくる軌道を、回帰軌道という。
日本の計画では、一日に一回、もとの目標の上空にもどることを前提にしている。
この太陽同期回帰軌道は、ほかの観測衛星や資源探査衛星でもおなじことで、ごく一般的な軌道である。
情報収集衛星に特有の軌道というわけではない。
こうして見てくると、情報収集衛星といってもその機能は観測衛星とほとんどおなじである。
分解能など性能面でのちがいはあっても、基本的には似たようなものなのだ。
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